第2回更新一言メッセージ

 ハイデルベルクの大きな通りにつながる裏路地は昼間でも薄暗い。足元に気を付けなければ、不意によく分からないものを蹴り飛ばしてしまう。このような道には慣れていないのだろう、私の前を歩いていた女性が小さな悲鳴を上げた。それに続いて辺りにはカラカラと何かが転がる音が鳴り響く。驚いた猫が喚きながら路地裏を駆けていく。その声に驚いて女性が悲鳴を上げて走り去る。まるで精霊術の発動連鎖のように、道路に落ちているいろんなものが二人によって連鎖的に蹴散らされいく。よくもまぁ、一般人がここまで連鎖を起こせるものだ。私の目が一連の騒ぎを見届けると、路地裏に似つかわしくないヒールの音はすでに光の向こうへと消えていた。
 路地裏の騒動こそすぐ暗闇に呑みこまれたが、この場にいるのは騒ぎを起こした一人と一匹だけではない。今の騒ぎで起こされたのか、暗闇の中にはいくつかの視線が浮かび上がっている。太陽から隠れるようにして眠る、どうせこの街にとって取るに足らない人間達だ。彼らの視線は気にも留めず、私の足は前へと進んでいく。
 先程の女性が悲鳴を上げた先で、私の目が白くぼやける何かをとらえた。ダイスだ。賭博好きの浮浪者が夜中に騒いでいたのだろう。酒に呑まれて忘れられたものか、あるいは賭け事の最中に何かが起こって、道具だけ置き去りにされたのか。考えたところでダイスが答えをくれるわけでもない。意味を持たない数字を主張したまま、ダイスは再び路地裏に取り残された。
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