Jingle bells, jingle bells,
Jingle all the way!
O what fun…
外を走り回る子供たちが、クリスマスに浮かれて歌を歌う。この町でどのような宗教が幅を利かせているのかは知らない。精霊を信仰する教会があるかと思いきや、また別の場所では神や救世主を崇める教会が建っている。この日は、後者の重要な日。救世主の生誕を祝う日。彼らは救世主の生誕を祝っているのか、それともサンタクロースから与えられた贈り物を見せ合っているだけなのか。いずれにせよ、この耳に届く喧騒は不愉快なものだ。白く塗られた世界から届く光も、私には眩しすぎる。
窓を閉め、カーテンを閉め、ドアを閉める。そんな歌は聞きたくない。お前たちの幸せそうな声は聞きたくない。
Happy birthday to you,
Happy birthday to you,
Happy birthday, dear …
未だ窓の隙間から漏れてくる歌声をかき消すように、私は喉の奥から声を振り絞った。
楽しみにしていたのはサンタクロースだったか、それとも母の誕生日だったか。ケーキを囲ってみんなで笑いあえる幸せな時間。この町よりも深い雪に覆われたあの家で。煉瓦でつくられた暖炉に照らされて、ほのかに赤く頬を染めるケーキ。渡されたプレゼントの袋を抱えて、にこにこしている弟。あの暖炉の日に移されていた幸せは、今はもうない。
ひとつ、ひとつ、さっきケーキに立てられたキャンドルを抜いていく。溶けた蝋が指に張り付くが、そんなものは気にもならない。抜いたキャンドルを一つずつまとめ、その火を一つに束ねる。小さな火は仲間を見つけるとすぐに惹かれあい、やがては巨大な炎へと成長していく。
炎は嫌いだ。凍りついた体を溶かし腐らせ、灰になった体は救済の日に蘇ることができない。教会で熱心に祈りをささげる子供たちは知らないのだろう。どれだけ祈りをささげても、救ってくれる神などいないということを。泣いて神様に助けを求めても、あの炎を消すことは私にはできなかった。あの時の私には。そう、あの時は。
燃え盛る炎を、私の左手が包み込む。焦げていく手のひら。鼻に届く不快な臭い。束ねられた炎は確かに一瞬私の手を焼いたが、すぐに呼吸する術を失って手の中に消える。あの時の炎も、こんな風に消せたなら! こいつが私の幸せを全部奪っていった! どうして! どうして!
ひとしきり涙を流した後、私は静かに左手を開いた。感情に任せて氷づけにされたキャンドルが、小さな悲鳴を上げて粉々に崩れ落ちる。氷の中で修復された左手に、焼けた痕跡は見当たらない。違うんだ。違う。私が治したいのはこんな左手じゃない。
神様に祈っても助けてもらえないんだ。
だから。
だから、私がみんなを──