「…………死んだ……?」
それは、実家に手紙を出して二週間が経った頃だった。
機体の整備のために出勤した私に、男はそう伝えた。
「えぇ、誠に残念ながらね」
彼は、私を今の組織に紹介しハイドラライダーになることを持ちかけた男だ。
この組織に資材やパーツ、あるいは誰の所有物でもないハイドラを売りに来る商人で、
私のハイドラのパーツも彼を介して仕入れていたことがある。
「……なんで……両親が……」
「殺されたのですよ。借金取りにね」
「借金……?」
私が家にいた時、そんなものがあるという話は聞いていなかった。
たしかにサラサの治療にはお金がかかっていた。
あのまま治療が何年も続けば家が傾くかもしれない……
けれどもそれは、何年も先の話のはずだった。
サラサの治療を諦め、ホスピスに預けようとしたのも
そうならないための決断だったのではなかったのか。
「どうやら彼らは大量の借金を作っていたようですね。
それもここ二、三ヶ月の短期間に……」
「……」
二、三ヶ月。その期間を聞いて嫌な予感がした。
私達が家を出てから三ヶ月程経つ。
ライダーになってからは二ヶ月だ。
「彼らの商売から考えて、
これ以上の借金を作らなければ、数年で返せる額だったとは思うのですが。
リスクを埋めて確実に回収しておきたかったのでしょう」
「あぁ、ご安心ください。
あなた達が肩代わりをする必要はありませんよ」
「彼らの借金はその財産を差し押さえて全て完遂されました。
その代わりにあなた達の実家も、土地も、
ご両親の臓器も、全てお金に変わってしまいましたがね」
「そうそう、彼らが借金をした理由ですが……
何かを大量にかき集めていたようなのですよ
それが何なのか、私達には突き止められませんでしたが……」
「なにか、心当たりはありませんかねぇ……?」
「……!!!」
その一言で、全てが繋がった気がした。
おそらく両親は、融資も含めて自分たちが用意できるお金を注ぎ込んでラサの薬を集めたのだ。
私達のもとに届いた大量の薬。
あれだけの薬を用意するのは、家にあった資産と収入だけでは不可能なはず。
だけどそんな、自分たちの命を危険に晒すような借り方をするなんて……。
私が……私がサラサを助けようとした我儘で、
両親の命まで奪ってしまったというの……?