「……生きてた?」
「そうだ! 姉さんが生きていたんだ!
ハイドラに乗っているときに通信が入って……
姉さんはすぐに飛んでいってしまったんだけど……」
そう言って喜ぶ兄の表情には、恐怖と焦燥感が張り付いていた。
兄がハイドラライダーとして働き始めて何週間経っただろうか。
久しぶりに家に帰ってきた兄は、開口一番に姉の存命を私に告げた。
それが『残像』であることは明らかだった。
だって、姉さんが死んでしまったことは、私達が痛いほどよく知っているのだから。
姉が戦場にいた。そう信じなければ兄は心がどうかしてしまうのだろう。
姉が死んだ日から兄の行動は、不安を感じさせるものばかりだった。
「必ず姉さんを連れ戻してくるから、
またしばらく戻って来れないと思う。
それまで待っててくれ」
「ねぇ、兄さん……」
飛び出すように兄は扉を開けて、再び戦場に向かっていった。
すがるように兄を掴もうとした私の手は、ずっと虚空に伸ばされたまま。
「兄さん……待って……」