冷えた操縦棺の中で、エンジンが駆動する音が響く。
機器のチェックのために回転数が切り替えられ、呼応して駆動音も低く高く変化する。
操縦棺全体を揺らすその音は、まるで巨大な獣が威嚇する唸り声のようにも聞こえる。
次に様々なボタンが押され、レバーが動かされ、対応したアセンブルパーツが駆動する。新たな威嚇音が操縦棺に加わる。
操縦棺内の暗さも相まって、四方八方からアセンブルパーツの駆動音が伝わるその様は
まるで暗闇の森の中で無数の獣に囲まれているかのようだった。
獣の声の中で計器が確認され、問題ないことが手元のチェックリストに記載されていく。
外部カメラの電源が入り、ようやく操縦棺は暗闇から解放される。
黒から白へ。カメラに写ったのはどの方位も霧ばかり。
目視では何も見えないことに変わりはなかった。
レーダーには敵の部隊の位置が曖昧ながら映っている。
目標はダミーコンピュータで構成された部隊。
その中には新型量産兵器も含まれている。
今回の目的はその新型量産機の性能チェック。
戦争ではないが、実戦ではある。
同じく初陣となるそのハイドラにとっても都合が良かった。
エンジンを制御するスロットルレバーが前に倒され、ミストエンジンが再び高い唸り声を上げる。
そうしてそのハイドラは動き出した。
新型量産機の性能と、自身の性能を測るため。お互いの初陣に向かって。