第12週目



 両親の葬式が行われたのは、小雨の降る、霧に包まれた日でした。
そこにいたのは、私達兄弟三人と、両親のもとで働いていた人たちでした。

 葬儀はしめやかに行われ、両親が入った棺桶が、それぞれ土の中へと埋められました。
私は最後にその顔を見ることが出来ませんでしたが、
質素で小さな棺桶に入った両親は、その箱よりもずっと小さな姿になっていたといいます。
借金の形として奪われた両親の身体は、お金になる部分は全て削ぎ落とされ、
まるで見せしめのようにこの土地へ返されたのだそうです。
やり方としてあまりに酷く、まるで一昔前の時代のような野蛮な行為でした。

 借金の担保となったのはこの地域の土地も含まれており、
葬儀に参加した人たちの顔は一様に険しいものでした。
両親にこのような仕打ちを行った人間が自分たちの上に立つのですから、
その気持ちを推し量るのはそう難しいことではありません。
すでにこの土地を離れていった人も少なくはないといいます。


 葬儀の合間に、お姉ちゃんやお兄ちゃんは
この葬儀のお金を出してくれた人たちにお礼と、そして今後の事を話していました。
部屋は用意するからこの地域に戻ってきて欲しいだとか、
親に代わっていつかまたこの地域の管理をしてほしいだとか。
 そんな、お姉ちゃんやお兄ちゃんに向けられた言葉とは打って変わって、
その後ろについていた私に向けられた視線は、とても冷たいものでした。
あれは、きっと死神に向けた視線なのでしょう。
私がいなければ両親が殺されることもなかった。
私がいたことで、彼らの生活にも影を落とすことになってしまったのです。
 でも、一つだけ分かったことがあります。
父さんたちの仕事はその下で働く人達から悪くは思われていなくて、
そしてお姉ちゃん達もまた、その人達から期待されていたということ。
それが分かったただけで、私にとっては十分です。

 でも、どうしてそんな無茶を?
殺されるようなリスクを負ってまで、
薬を一度に買う必要なんてなかったんじゃないの……?